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外国人アーティストの来日は・・・



 新型コロナウィルスの変異型が・・・というニュースでまたこの先どうなるのかわからなくなってきた今日この頃です。宗次ホールでは春先の全面休館を経て、6月以降コンサートを徐々に再開し、8月以降はほぼ通常のペースに開催頻度を戻すことができたとはいえ、それでも渡航上の制約を受けてほとんどの海外アーティストのコンサートは中止せざるを得ませんでした。今年予定していながら中止に追い込まれた公演は、発売前(日程決定済みだが未公表)のものを含めると約150公演。ヴァイオリンと弦楽四重奏の2つのコンクールも中止になってしまいました。

 そんな状況の中、あれは9月半ば、「入国できそうなんだけど、急遽演奏会やってもらえない?」という話が舞い込んだのが、ロシアの怪物ピアニスト アンドレイ・ガヴリーロフ氏。身内に日本人が居ると入国条件が緩和されるらしい・・・ということでしたが、その時点ではまだ半信半疑。その後、「オピッツ氏も入国できることになったよー(氏も奥様が日本人・・・まさに本日、名古屋でベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏を敢行中)」という話が聞こえてきて、しかるべき手続きを踏めば入国できるということがわかってきました。(あ、ウィーンの某オーケストラが、、、というのも話題になりましたが、あれは、もう別物だと思っています。なんの参考にもなりません。)

 さて、そして冒頭の写真。がらんとした空港に大量の荷物・・・。この写真、右側に立つ帽子をかぶった人物こそ、当館で来年2月に出演予定の鉄人クラリネット奏者 リチャード・ストルツマンさんです。本来は今年6月に宗次ホールが招聘元となって来日ツアーを行う計画していましたが、早々に延期を決定。しかし延期したとしても果たして実現できるのだろうかと事態を見極めていたところ、音楽とプライベートの両面でパートナーであるマリンバ奏者のミカ・ストルツマンさんより「またいつ渡航できなくなるかもしれないから、12月のうちに日本に行くことにします!」と連絡あり。そこで、招聘手続きを大幅に前倒しし、なんとか無事お二人は日本に到着。やっとこのほど2週間の「隔離期間」が無事終了したところです。
 




 
 ちなみに、来日に際して外国人アーティストには、出発前72時間以内のPCR検査の受診が義務付けられているとともに、日本で演奏活動をするために必要な「興行ビザ」を取得するための「在留資格認定証明書」のほかに、「レジデンストラック」と呼ばれる書類を別途提出する必要があります。(こちら

 そこでは「対象者の訪日目的が真に急を要し、必要不可欠であることの理由」や、日本への入国後にCOCOA(接触確認アプリ)をどのスマートフォン端末にインストールするか、といった項目が並んでいます。また、入国後の移動手段は、「自家用車、受け入れ先企業団体(アーティストの場合は音楽事務所の社用車)、レンタカー、ハイヤー」に限るなどの誓約事項がいくつかありまして、これらに違反した場合のペナルティとして「(招聘元の)企業・団体名が公表され得るとともに、今後当該企業・団体が招聘する者に対して本邦入国が認められないことがあることを理解します」という記述もあります。例えば、もしあるアーティストが14日の間に禁じられているタクシーで出かけたことが発覚した場合、同じ音楽事務所が招聘したほかのアーティストの入国もNGになるからね、というわけです。待機期間中は、ストルツマンさんの滞在先に、関係機関から滞在先に間違いなく居るかどうか、そして健康状態はどうかを確認する電話が毎日かかってきたそうです。

 また“待機2週間”と簡単に言いますが、スコアがあればなんとかなる指揮者はまだしも、演奏者はその間、楽器を練習できる環境を整えるのが大変。上述したガヴリーロフ氏は「電子ピアノでOK」という人でしたので大変助かったようです。これが、1月7日に当館に来演するチェンバロ奏者 ジュスタン・テイラーさんの場合は、チェンバロを2週間貸し切り可能かどうかが鍵でしたし、ストルツマンさんご夫妻についても、ミカさんのマリンバをどうするかという問題が…。結局、アメリカから運ぶことになり、冒頭の写真の奥に移る大荷物はまさにこの分解されたマリンバです。

 話を元に戻しまして、ストルツマンさんにももちろん、写真の通り、検査のためクリニックの外で待っていただいたり(寒くて風邪を引きそうになった!とのこと)、総領事館に出向いていただいたり、まあ様々な雑多な手続きと、トラブル(ここには書きませんが実に色々な問題が勃発!)を乗り越えて、ようやく来日、2週間待機を経て晴れて自由の身・・・。とはいえ、これから2月までも、感染に常に気を付けながらの日々が続きます。
(にしの)

☆2021年2月11日 リチャード&ミカ・ストルツマン with 細川千尋 公演ページはこちら


追記:この記事本編を書いた数時間後に、『新規入国、1月末まで一時停止』という報道がありました。まだまだコンサート中止の範囲が広がりそうです。(早速先ほど、計画されていた未発表公演に関して、アーティストの来日見送りの知らせがありました。)


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