お元気ですか?vol.2 海外在住の演奏家達に状況を聞きました~
先日掲載しました『お元気ですか?vol.1海外在住の演奏家達に状況を聞きました~』に続き、今日は更に4人のアーティストからのインタビューを掲載いたします。4名とも、2020年コロナウィルスの影響で宗次ホール公演が中止となってしまった方々です。今年、もしくは来年に振替え公演が叶いますように。希望をもちつつお話を伺いました。
愛知県も緊急事態宣言が3月7日まで延長(2月4日現在)となってしまいましたが、どうか皆様が引き続き健康に、安全に過ごせますように。
(以下、名字のアルファベット順です)
フランソワ・デュモン(ピアニスト)François Dumont【フランス】
( 2020年10月16日シャトールー(Châteauroux)で開催されたリストマニア音楽祭で、ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番と第5番の弾き振りとリストの巡礼の年 第3年 「夕べの鐘、守護天使への祈り」 を演奏したときの写真。デュモン氏は、去年宗次ホール初登場となる予定でしたが、やむなく中止に。)
©Photo NR
ー去年前半に比べ、演奏・レッスン等の音楽の仕事の状況はどのように変わっていますか?
7月から10月終わりまでの数か月間、奇跡的にたくさんのコンサートに出演できたものの、そのあとまた様々な規制が敷かれ、再びロックダウンが行われる事態となってしまいました。それにより文化的な生活はほぼ失われてしまいましたが、例外的に11月にスペインのビルバオで素晴らしい日本人バイオリニスト庄司紗矢香さんと共演する機会がありました。それ以外は自宅で過ごし、たくさん練習をし、家族と時間を過ごし、静かな時間を楽しんでいます。
ーデュモンさんの居住先(フランス)の雰囲気はどうですか?驚いたことなどは?
他のフランスの都市同様、ここリヨンでは夜6時以降の外出禁止令が続けられています。全てのレストランやバーは営業停止となり、コンサートを含む全てのイベントは開催することが禁止されています。国中で3度目のロックダウンが行われるのではないかと憶測が飛び交っています。
感染拡大が止まらず、1年前とほぼ同じ状況になってしまっていることに、ただただ驚いています。ワクチンが開発されたとはいえ、政府はウイルスの感染拡大を止めることができないようです。ですからこれがパンデミックと呼ばれるわけですね!また、ヨーロッパ各国の政府のほとんどがコンサート、劇場、そして美術館までも閉鎖する決定を行ったことに大きなショックを受けています。全ての文化的な生活がストップしてしまいました。大きなショッピングモールに買い物に行ったり、満員の地下鉄やバスで移動したりすることはできるにも関わらず、です!これは我々の社会にとって大いなる悲劇だと思います。芸術と教育は大きなダメージを受けています(1回目のロックダウン中、学校は閉鎖され、今やいくつかの大学も閉鎖されました)。
ーこの時期、新しく始めたこと/日々の楽しみは?
新しくたくさんの作品を勉強しています。また、ショパンのバラード全曲と即興曲全曲を収録したレコーディングも行いました。また、運動もよく行うようにし、心身ともにフレッシュでいられるよう、心がけています。
また、ストリーミング配信で変わったコンサートも行いました。特にポーランドのカトヴィツェで行ったコンサートでは、3,000人収容できるホールに無観客という不思議な経験でした。
先ほども述べましたが、妻や子供とゆっくりとしたペースの生活を楽しんでいます。毎日2歳の娘を保育園に連れていくのは大きな喜びです。料理をするのも好きですし、恐ろしいニュースをずっと見る代わりに面白い本を読んだりするようにしています。
ー次日本に演奏会に来られるときに、絶対やりたいことは?一番恋しいことは?
日本の聴衆の皆さんはおそらく世界で1番だと思います。高い集中力、アーティストへの敬意、そして幅広い知識を持ちながら、暖かく熱狂的でもある聴衆の方々について沢山の素晴らしい思い出があります。日本の皆さんはクラシック音楽を深く愛していらっしゃり、コンサートに行くことは生活の中で重要な一部分だと考えていらっしゃるように思います。また、日本には理想的な響きをもつ素晴らしいコンサートホールがたくさんあります。
東京には良い友人が何人かいます。次に日本に行けたら、まず初め彼らに電話をかけて、日本のレストランで夕ご飯を一緒に食べたいと思います。(その頃までに状況がよくなっていることを願います!)なんといっても日本の料理はとても美味しいですから!それに私たちの人生には、人と人の触れ合い、暖かさや会話が必要です。
ーありがとうございます。最後に、お気に入りの写真をください!
昨年末、ビルバオ〈スペイン)にて2020年最後のコンサートで素晴らしいヴァイオリニスト庄司 紗矢香さんと共演する機会に恵まれました。終演後のワンショットをお届けします!
ニコラス・ナモラーゼ(ピアニスト)Nicolas Namoradze【ジョージア出身/現在ドイツ滞在中】
(2019年6月4日宗次ホール出演時の写真)
ー去年前半に比べ、演奏・レッスン等の音楽の仕事の状況はどのように変わっていますか?
去年3月初旬まではコンサートで忙しい毎日を送っていましたが、そのような状況が一変しました。その頃行っていた北米でのツアーを途中で中断せざるを得なくなり、ベルリンに住む両親のもとに戻りました。それ以来、いくつかコンサートで演奏する機会はあったものの、旅行する機会がほぼなくなってしまったことは最も大きな変化です。しかし、たくさんのエキサイティングなプロジェクトが進行中ですので、相変わらず忙しく過ごしています。
ーナモラーゼさんの居住先(ドイツ)の雰囲気はどうですか?驚いたことなどは?
ここベルリンでは、他のヨーロッパの都市よりも状況は良いので、今はベルリンにいることができて幸運だと思っています。冬も終わりつつありワクチン接種も始まっているので、これから少しずつ状況がよくなることを願っています。
ーこの時期、新しく始めたこと/日々の楽しみは?
ロックダウン中は、膨大な数の作品を新たに勉強したり、博士課程の論文を仕上げたりと、なにかと忙しく過ごしていました。そしてなんと、これまでずっと興味のあった神経心理学についても大学院で勉強を始めることになりました。
ー次日本に演奏会に来られるときに、絶対やりたいことは?一番恋しいことは?
日本の芸術や文化の大ファンなので、前回の日本での演奏会の際にはたくさんの楽しい思い出ができました。日本について恋しいことはたくさんあります!素晴らしい聴衆の方々やコンサートホール、美しい街並み、そしてもちろん美味しい食べ物です。またこの機会に、前回の公演にお越しくださった方々や去年残念ながら中止となってしまった公演にお越し頂く予定だった方々に改めてご挨拶させて頂きたいと思います。みなさんが安全に健康でお過ごしになっていらっしゃるようお祈りしています。この困難な状況が一日も早く終息し、私たちの日常やコンサートホールで生演奏を楽しめる日が戻ってくるように願いましょう!
今年の後半に再び日本を訪れることができたとしたら、やりたいことは山ほどあります。特に、前回見物した浅草寺を再び訪れて、仲見世通りできびだんごと冷たい抹茶を堪能したいです。
ーありがとうございます。最後に、お気に入りの写真をください!
これは数か月前にロンドンフィルと共演した際の写真です。彼らと共演できたことは本当に素晴らしい経験でした!
以上、協力:アイエムシーミュージック
アンドレア・オビソ(ヴァイオリニスト)Andrea Obiso【イタリア】
(2019年9月17日宗次ホール出演時の写真。右からアンドレア・オビソ氏、ホール代表 宗次徳二、ピアニスト小澤佳永さん)
ー去年前半に比べ、演奏・レッスン等の音楽の仕事の状況はどのように変わっていますか?
以前より自分の時間を持つことが出来、より多くの生徒さんを教える事が出来ています。演奏会は激減していますが、先々の公演は色々と予定されていますし、これまでと違うやり方で音楽を届ける方法を模索することに楽しみを感じています。現在サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団のコンサート・マスターを務めており、無観客とはいえ活動は大変充実しています。キリル・ペトレンコ、ダニエレ・ガッティ、ジャナンドレア・ノセダといった素晴らしい指揮者を迎えることが出来、このような時期にマエストロ達とご一緒させて頂けることに、特別な意味を感じています。
ーオビソさんの居住先(イタリア)の雰囲気はどうですか?驚いたことなどは?
現在のイタリアの状況は良いとは言えませんが、楽観的に構えるようにしています。
多くの制限がある中でも音楽を創り、届け続ける周囲のパワーには驚かされるばかりで、大変良い刺激を頂いています。
ーこの時期、新しく始めたこと/日々の楽しみは?
去年は(アメリカから故郷イタリアに引っ越すなど)変化の年でしたが、大切な時期だったと思っています。ローマで新しい生活を始め、この古代都市から計り知れないパワーとインスピレーション受けています!
ー次日本に演奏会に来られるときに、絶対やりたいことは?一番恋しいことは?
次回来日が果たせた時には、これまで「当たり前」だと思っていたこと、例えば日本ヴァイオリンでの楽器の試奏や皆さんとのおしゃべり、羽田空港からのぞみ号に乗り、名古屋へ向かう車窓から富士山を見たり・・・そんな幸せを改めて噛みしめたいです。日本は、私の第2の故郷です。また、再訪できる日が早くおとずれますように。
ーありがとうございます。最後に、お気に入りの写真をください!
1枚といわず、3枚お送りします 笑
1枚目はサンタ・チェチーリアにて、2枚目はキエーティ市(伊)にて去年の夏開催された音楽祭での様子、3枚目は去年11月カメラータ・ドゥカーレ管弦楽団と共演したときのものです。
モーリッツ・ ヴィンケルマン(ピアニスト)Moritz Winkelmann【ドイツ出身/現在スイス滞在中】
(2018年8月1日宗次ホールご出演時の写真。)
ー去年前半に比べ、演奏・レッスン等の音楽の仕事の状況はどのように変わっていますか?
2020年、まだ暖かい季節の内は幾つかコンサートが(かなり席が減らされた状態でしたが)ありましたが、現在は全ての公演が禁止されています。ホールに同時入ることが許されているのは、5人のみ。レッスンについてはマスク着用下でのみ許されていますが、殆どの人がオンラインレッスンを希望しています。
ーヴィンケルマンさんの居住先(スイス)の雰囲気はどうですか?驚いたことなどは?
ドイツ人として現在スイス(ベルン)に住んでいますが、ここ(スイス)の規制の緩さに驚きを隠しきれません。去年9月にやっと公共交通機関を利用する際のマスク着用が義務化、(ドイツでは、サージカルN95マスクが必須となっているくらいです。)営業を続けていた各種レストランも先月1月11日にやっと要請が出て、店を閉めることになりました。全体的にみてドイツの方がスイスより規制が厳しく、個人的にはドイツのやり方を支持します。なぜなら、コンサートや演奏旅行はパンデミックが過ぎ去らない限り戻っては来ないからです。そしてこれらの音楽活動が、私にとって何よりも大切なことですから!
ーこの時期、新しく始めたこと/日々の楽しみは?
去年の春、最初のロックダウンの際には料理とパン作りの腕を磨きました!同じような方も多いかもしれないですね。もちろんこれはほんの一部で、大半は新しい作品を勉強したり、音楽に対峙する時間に費やしています。私にとっては音楽とより深く向き合い、理解を深めることが出来る有意義で実り多き時間となっています。
ー次日本に演奏会に来られるときに、絶対やりたいことは?一番恋しいことは?
日本の美味しい食事、素晴らしいレストランたち、そして日本の皆様の“おもてなし”精神が一番恋しいですね。日本は本当に素晴らしいことだらけ!聴衆の皆様と音楽を共有出来る日が早く来ないかと、今からもう待ちきれません。
ーありがとうございます。最後に、お気に入りの写真をください!
去年7月、写真家コ・メルツ氏がシュトゥットガルトにて撮影してくれた1枚、そして私の練習室から見える冬の景色をお届けします。
動画は、去年相当数のコンサートが中止になった中で開催された、マンハイム・フィルハーモニー管弦楽団(ボイアン・ヴァイデノフ指揮)とベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を共演したときのものです。
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ありがとうございました!
(ひろた)