2020.1.26 平光真彌の室内楽「未知の名曲を探して」第4回 珠玉の英国音楽
1916年製オールド・ベヒシュタインによる3公演。最後はシリーズとしては3回目となる、ヴァイオリニスト平光真彌さんの「未知の名曲を探して」。今回は2016年の初共演以来となる、ピアニスト田村緑さんを迎えて、田村さんが留学していたイギリス近代の知られざる室内楽の佳作を発掘しようという内容。レクチャー担当はおなじみ《クラシック音楽の伝道師》松本大輔さん。今回選ばれた作曲家たち・・・ブリス、ブリッジ、フィンジ、エルガーは、皆、なにかしら第一次世界大戦(1914-1918年)に影響を受けていて、そして彼らの作品を演奏するのに、まさにその戦時中にイギリスにとって敵国のドイツで作られたピアノが使用されるという偶然。これを松本さんは「当時ならば考えられなかったことかもしれないけれど、100余年が経過した今だからこそ実現した奇跡のようなもの」と解説されていました。音楽はその時代の空気を連れてくる・・・この日のお客様はまさにそういったことを感じながら、演奏に聴き入っていたのではないでしょうか。
アンコールには、一風変わった珍曲、ヴァルデスというイギリス人が書いた「ジプシー・セレナード」を。とはいえこの作曲家、実は偽名。本当の作曲家はクライスラーだったという種明かし。そして最後はこの企画を締めくくるにこの曲しかないであろう、エルガーの「威風堂々第1番」。
終演後には現代のスタインウェイピアノと、1916年のベヒシュタインピアノの聴き比べも急遽行われ、多くのお客様がその違いにあらためて驚いていた様子が印象的でした。