2020.1.25 梯剛之 ピアノリサイタル
1916年製ベヒシュタイン・ピアノを使用しての3公演。もともとこのピアノを持ち込むことにしたきっかけは、24日のピアノトリオの公演を企画する際に「せっかく弦楽器が19世紀の演奏スタイルで仕上げてきているのに現代のピアノでは味気ないですよねぇ・・・」という話から。さらに「1つの公演のためだけにピアノをお借りするのは費用面でももったいないし、このピアノをもっとたくさんの方に聴いていただこう」ということで話が広がり、以前ウィーンにお住まいの頃、家で古いピアノを弾いていたという梯さんにオファーしたものです。梯さんが当時お持ちだったのは1904年製の同じベヒシュタインだったそうで、リハーサルのときから懐かしいとおっしゃっていました。
前夜の室内楽公演とちがい、この日はソロ。梯さんの様々なテクニックにより、ピアノが更に雄弁に、そして様々な表情を見せることに。ときには現代のピアノよりも輝かしく、あるいは重厚で硬質な音色も。そしてとにかく軽いボディが隅々まで振動してよく音が鳴ること! 倍音の出方のちがいでしょうか、細かな音が絡み合って生まれる新たな音色のグラデーションにいちいち耳が惹きつけられます。アンコールはバッハの「ゴルトベルク変奏曲」からのアリア、リストの「コンソレーション」、ベートーヴェン「悲愴ソナタ 第2楽章」の3曲。どれもこのピアノにピッタリの心憎い選曲でした。