2020.1.18 川口成彦 フォルテピアノ・リサイタル
昨年5月から1年を待たず再登場となった川口成彦さん。2018年にショパン国際ピリオド楽器コンクールに入賞した際のドキュメンタリー番組が再放送され、ショパンが活躍していた当時のピアノに注目が集まっている中でのリサイタルということで、今回も前回に続き満員御礼。今回のプログラムは川口さんの「挑戦」を詰め込んだもの。得意のシューベルトに、ベートーヴェンの後期ソナタからの1曲、そして後半のショパンも捻りを加え、短いワルツを連続で演奏して一つの大きな曲のように聴かせる、題して「シューベルト風ワルツ・ツィクルス」。そしてめったに演奏されないピアノソナタ第1番と、盛りだくさんの内容。
使用された1820年製のピアノは、ショパンがパリに出る前に使用していた楽器に近いもので、「この楽器を使うことでまだ10代の頃のショパンが曲の中で意図していたことが発見できる気がする」と川口さん。ピアノソナタ第1番はまさにショパンが18歳のときの作品ですが、音符がギッシリ詰まっていて有名な第2番や第3番のソナタよりもずっと弾きにくくて難しいのだそうです。しかもこの日はそれを当時のピアノで演奏するということで、ほとんど楽器の限界に挑むようなもの。初演のような気持ちで演奏したという川口さんに、聴きても若き日のショパンを重ねていたかもしれません。
アンコールもショパン。練習曲から「エオリアンハープ」。モデレーターという、フェルトを使用して音色を変えるこの楽器独特の装置の効果を活かし、まさにハープのような響きを醸し出していました。