2019.12.1 アンリ・バルダ ピアノリサイタル
「古き良き時代の空気」を纏ったフランスの巨匠ピアニスト、アンリ・バルダさん。今回のプログラムはソナタ2曲を含む、盛りだくさんの「オール・ショパン・プログラム」。普通のピアニストなら休憩込み2時間20分は掛かりそうなボリュームですが、それをこのバルダさんは2時間ジャストでまさにマラソンばりに疾走! 強めの打鍵にカラッと明るい音色、きりっと引き締まったテンポが相まって、ショパンの演奏にありがちな情念ドロドロな感じは一切なし。
冒頭の「即興曲」4曲はまさに「これぞ即興の言葉の意味そのもの」という闊達さ。「葬送」ソナタも爽やかなほどに疾走していくのが逆に恐ろしい感じで、後半のバラード、マズルカ、ソナタ第3番も、目まぐるしいほど次々に繰り出される表情の変化に、ジェットコースターに乗せられてしまった感覚。次は何が起こるのか・・・片時も注意をそらすことができません。
万雷の拍手に応じてアンコールには、これまたさりげない崩しの味わいの妙にどきっとさせられる、ショパンのワルツとノクターンを1曲ずつ。幻の巨匠と呼ばれていたこともありましたが、とんでもない! 現役バリバリのスーパーピアニスト。今後もますます聴衆を熱狂させることでしょう。