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吉野直子さん こだわりの「バッハ」プログラム 【11/1公演】 (前編)


11月1日に行われた吉野直子さんのハープリサイタル。
当館にとって全てのプログラムがハープ独奏というリサイタルは初めてのことです。

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今回は現代のグランドハープと18世紀後期に使われていた「ルイ16世ハープ」をモデルとした
古いハープの2台を使用しました。
グランドハープの背丈は当館のエレベーターぎりぎりでした。

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カバーを外して並べてみたところ。
「ルイ16世ハープ」は、弦の本数が少なくひとまわり小ぶりです。
ガット弦で張力が弱く、グランドハープよりも繊細なタッチで軽く弾くことで
多彩なニュアンスが出せるのだとか。
現代の楽器からこの古い楽器に乗り換えてモーツァルトなどの当時の作品を弾くと
「楽器の方から教えてくれることが多い」という吉野さんの言葉が印象的でした。

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ハープといえば楽器の装飾がうつくしいですよね。
グランドハープのキンキラキンの豪華な装飾も圧倒的ですが、
このルイ16世ハープも木彫のレリーフが美しいですね。

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こちらは現代のグランドハープの裏側。
普段この角度で楽器を見ることは少ないですよね。
胴にあたる部分には孔が空いていて、
ペダルが7本ついています。
7本は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音に対応しています。
ペダルは階段状の切り込みの中を動かします。
マニュアル車のシフトノブのようなもので、
一番上で「♭(半音低い)、真ん中が「ナチュラル」、一番下で「♯(半音高い)」というように
夫々の音の音程を一括で変化できます。
一つの音を上・下の2段階に半音ずらすことが出来るので
「ダブル・アクション」と呼ばれます。

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こちらは「ルイ16世ハープ」のペダル。
小柄ですが、ちゃんとペダルがついています。
ルイ16世の王妃、マリー・アントワネットがハープを愛奏したこともあって
当時楽器の開発が急速に進み、ペダルハープが登場しました。
ただし、まだこの頃は「ナチュラル」か「♯」を選択する
「シングル・アクション」と呼ばれる機構でした。

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ペダルを踏むとワイヤが引っ張られて弦を張っている上部の金具が回転し弦に触れます。
まるでギターのフレットを抑えたような効果で、音程が替わるわけです。
この金具を回転させるために、ハープの優雅なボディーの中には、
ワイヤー、歯車などの部品がぎっしり詰まっています。

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吉野さんが到着して、早速調律が始まりました。
特に昔のハープは音程が狂いやすいので照明も抑え目にして
極力温度・湿度が変わらないように気を遣います。

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グランドハープでのリハーサル中。
「バッハの海」のシリーズタイトルになぞらえた
波のような照明の中で、ハープの幻想的な響きが漂います。

⇒後編につづく!


(スタッフ/にしの)


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