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ストラディヴァリウス:300年前の『氷河期』が生んだ、二度と作れない10億円の音色


さて、先日「ヴァイオリン・コンクール」も無事終わり、ストラディヴァリウスを含む3つの名器が上位入賞者に貸与されました。
「ストラディヴァリウス」ーもしかすると、こちらのニュース を覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
上記ニュースで語られている「ダ・ビンチ」は1939年に映画「オズの魔法使い」の収録に使われたり、
かのアルバート・アインシュタインがヴァイオリン・レッスンを受ける時に使われていたとか。

今回の「ヴァイオリン・コンクール」の貸与楽器≪レインヴィル≫も1697年製。どうして、300年以上前の楽器に数十億という価格がつくのでしょうか。

「ストラディバリウス」 とは?


1644年から1737年まで生きたイタリアの弦楽器製作者(バイオリン職人)であるアントニオ・ストラディバリによって製作されたバイオリンのこと。

ストラディバリはわずか12歳の時にヴァイオリン製作のキャリアをスタートさせ、当時著名な弦楽器製作者であったニコロ・アマティに師事したと推測されていますが、制作技術の違いがあることからはっきりしたことはわかっていません。
ストラディバリは、ヴァイオリンの駒の現代的な形状の確立、ニスの色の深みの増し、そして胴体を浅くしてより力強い音色を生み出すなど、ヴァイオリンを現代の形へを導く設計上の改良に貢献します。

ストラディバリウスの「黄金時代」

1700年から1725年までの期間は、ストラディバリウスの「黄金時代」として知られ、彼が最高水準の楽器を製作した時期。
名声によって経済的に豊かになり、より良質な木材やニスなどの材料を購入できるようになったことも大きな要因でした。
前述の「ダ・ビンチ」もこの時期に製作されたものです。

ストラディバリウスのバイオリンはなぜそんなに高価なのか?

2022年に売買された宗次コレクションの「ダ・ビンチ」はストラディヴァリウスに支払われた金額として歴代2番目に高かったそう。
最高額は2011年に「レディ・ブラント」ストラディバリウスに支払われた1590万ドル!!(約 25億3,668万円。)
この楽器は300年間ほとんど演奏されずに保管されていたため、制作当時の状態が驚異的に維持されていました。

●現存する数が限られており、二度と製造できない

ストラディバリは生涯で合計1,116台の楽器を製作し、そのうち960台がヴァイオリンだったと推定されていますが、現在残っているのはわずか650挺で、そのほとんどは個人コレクターの手に渡っています。
製作されてから300年の間には戦争で失われたものや盗まれたもの、また飛行機事故によって失われてしまったもの
 などもあり希少性が増しています。

●小氷期の木材と謎の薬液

当初の仮説では、ストラディバリウスが独自のニスに何か添加物を加えていたと考えられていましたが、その後化学分析が行われ、ニスに特異な点は何も見つかりませんでした。科学者たちは、小氷期(1300年~1850年)が要因の一つだったのではないかと推測しています。
小氷期には木材の成長が遅くなり密度が高くなったことで、独特の音色が生まれたと考えられるからです。
また、ストラディバリが使用した木材は、アルミニウム、カルシウム、銅などの様々な化学物質で処理されていたことも判明しており、これが音響特性を変化させた可能性もあるとのこと。当時は単に「虫食いやカビ」を防ぐために木材をこれらの薬品に浸したと推測されていますが、この化学反応が数百年の歳月をかけて木材のセルロースを変化させ、現代では再現不可能な「枯れた音色」を作り出したという説が有力視されています。

●安定した投資先としての価値

過去100年以上にわたり、オークション価格が大きく暴落したことがほとんどありません。世界情勢が不安定な時期でも価値が維持されていること、また二度と生産されないものであることから、需要が僅かに増えるだけで価値が跳ね上がります。
また、「誰が使っていたか」といった来歴や歴史的背景に対して数億円単位のプレミアがつきます。

そのメンテンナンスも大変!

ストラディヴァリウスを所有することは、まさに「国宝級の動産」を預かるようなもので、その維持管理には一般の楽器とは桁違いの苦労とコストがかかります。

●「健康診断」だけで数十万円!
● 湿度の徹底管理
● 魂柱(サウンドポスト)のミリ単位の調整
●  驚愕の「保険料」事情
(一般的に、バイオリンの保険料は評価額の0.5%〜1%程度と言われています。仮に20億円のストラドであれば、年間で1,000万〜2,000万円もの保険料が発生する計算に!)

ストラディヴァリウスー乗りこなすのが極めて難しい名馬

これほどに高価なストラディヴァリウスですが、誰が弾いても素晴らしい音が出る魔法の楽器ではなく、むしろ弾きこなすのが難しい楽器と言われます。著名なヴァイオリニストたちのコメントがそれを物語っています。

●イツァーク・パールマン
「ストラディヴァリウスは、弾き手に多くのことを要求してくる。 楽器が『私をこう弾きなさい』と指示してくるんだ。もし自分勝手な弾き方をしようとすれば、楽器はそれを受け入れてくれない」

●アンネ=ゾフィー・ムター
「ストラディヴァリウスは非常に気難しい楽器よ。天候や湿度、そして奏者の体調や精神状態にまで敏感に反応するの。ある日は天使のような声を出すけれど、別の日には全く心を開いてくれないこともある」

● ジョシュア・ベル
「この楽器は、私の思考よりも反応が速い。 ほんのわずかな指の圧力の変化や、弓のスピードの違いが、ダイレクトに音に現れてしまう。だからこそ、一瞬の油断も許されない」

ぜひ、その生音を聴きにいらしてください!

この人類の遺産のような貴重な楽器。是非宗次ホールで生の音を聴きにいらしてください!

●(チェロ)7/12(日) 上野通明&北村朋幹 デュオ・リサイタル(残席わずか!)
●9/19(土)髙木凜々子 ヴァイオリン・リサイタル (5月発売予定)
●(チェロ)2027年1/23(土)辻本玲 チェロ・リサイタル (発売日は追ってお知らせいたします)
●2027年 3/13(土)木嶋真優 ヴァイオリン・リサイタル (発売日は追ってお知らせいたします)

他にも、公演情報は随時HPへ掲載して参ります!皆様のご来場お待ちしております。


企画制作:廣田政子


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