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怖い音楽ってどうして怖いの


いつも宗次ホールを応援いただきありがとうございます。久しぶりの投稿です!

先日好きな映画を観ていて、ふと考えたことを今日は書いてみます。

映画やドラマは背景音楽に溢れています。ロマンティックな場面や泣けるシーン、手に汗握る戦いのシーンなど、雰囲気を盛り上げるのに音楽はかかせません。

この間、S.キューブリック監督『アイズ ワイド シャット』を観ていたとき。
秘密結社が開催する怪しい仮面パーティーに足を踏み入れた、招かれざる客・主人公。
侵入がバレ、吊し上げに遭う不気味なシーンにて・・・

(0'30のあたりからご覧ください)


#ファソ  ソ#ファ #ファソ~・・・(そしてこの音列が回文のように反復される)
やがて、極めて高・低音のユニゾンで不気味に繰り返されます。


ん?このBGMの感じ聴いたことある・・・

そうだ!「千と千尋の神隠し」で、千尋が湯婆婆の部屋に初めて足を踏み入れる怖いシーンも同じようにピアノによる高・低音のユニゾンではじまります。


両方とも、「これから何が起こるかわからない」という不気味なシーン。

どうして、このような曲想が恐怖心をあおるのか??考えてみました。


その1:まず、極端に高い音、そして低い音であること

こんな話があります。

「1980年代初頭のこと。アメリカの工学者、ヴィック・タンディは研究室で新型医療機器の開発に携わっていた。その研究所では“幽霊が出る”という噂が。ある夜ヴィックが一人で作業をしていると、突如として気分が悪くなってきた。冷や汗が出て鳥肌まで立ち、まるで誰かからじっと見つめられているような気分に。視野の端に灰色の影が映った気がしてハッと目をやると、すぐに消える。。。恐ろしくなってその日は帰宅。
翌日その原因を確かめるべく再度研究室へ。そこでタンディが発見したのは、開発中の医療機器に新しく取り付けたファンから出る、作動音。機器の部品と共鳴し、人間の可聴域を下回る19Hz(人の可聴域は大体20Hz~20kHzといわれる)の音が出ていたのであった。」

タンディは、超低周波が人間・そして動物に、恐怖感、目まい、かすみ目(低周波により、目玉が振動するからだそう!)、酷い時には過換気症候群やパニック発作を引き起こすことを発見します。
雪崩や虎の鳴き声などにも超低周波が含まれるそう。
人間を含む動物は、危険を察知するため特定の周波数に恐怖を感じるように進化してきたのかもしれません。

そうか・・超低周波とまではいかないまでも、超有名なこのテーマも、強烈な低音効果!


一方、超高い音というのも不安感を煽ります。
映画「サイコ」より


「音」自体が怖いわけではなくて、「音から想像する情景」が怖い。
つまり、脳に働きかけているわけです。
人間(動物)に一番警戒心を与えるのは「非線形雑音」と呼ばれるものだそうですが、
自然界に存在する「非線型雑音」の代表的なものが“動物の叫び声、鳴き声”。
このような音を瞬時にキャッチしなければ、敵に見つかり食べられてしまうかもしれない!
そんな、命を守るための体の反応です。
映画「サイコ」の高音も、どこか女性の悲鳴を想像してしまいませんか?

 ​​


その2:突然鳴り出すから

急に音が鳴り始めると、やはりゾクッ ビクッ とします。
先の『アイズ ワイド シャット』も、平和なボール・ダンスの会場を抜けて・・・
静寂の後に現れる単音が不気味です。


突然鳴り出す音に「ワッ!」と思わず声をあげてしまう観客。

脳は、視覚的な情報よりも、聴覚による情報をいち早く受け取ります。寝ている間も、常に危険に備えて耳は働き続けていますよね。
目覚まし時計だって聴覚に訴えかけます。


その3:半音階だから

これまでご紹介した映画のBGM、ほとんどが半音階です。
半音(短2度)のような不協和音は、協和音程(合唱などで綺麗にハモれる間隔)に比べ、人に不安感や、難解なイメージを与えます。

例えば踏切のカンカンカン・・・の音も半音がぶつかる不協和音。危険を警告する音です。


スーパーマリオ64は、この音楽を聴いただけで絶対攻略できない気持ちになります。
やや恐怖感すら感じてしまうのはなんででしょう。

そして、ショパン ピアノソナタ 第2番の終楽章。
“墓場を吹きすさぶ風のような音楽” と言われるこれも、やはり不気味な半音階。


半音階の他にもトライトーン(全音3つ分の音程で、増四度or減五度)という特別に不安定な音程があります。“Tonic”に戻りたい~!という不安定さをもつ和音ですが、“緊急地震速報” の不気味なチャランチャラン・・・にも、このトライトーンが含まれます。

これら
1.高音・低音であること(叫び声を連想、危険を思わせる)
2.突然鳴り出す(びっくり!)
3.半音/不協和音(不安感を煽る)

が、こわBGMの要素だということがわかりました。
ちなみに・・・怖い音楽も幸福な音楽も、目を閉じて聴くと、より強烈な印象を脳に与えるそうですよ!
ホラー映画の惨殺シーンは必ず目を閉じますが、逆効果だったのかしら?。。

(スタッフ 廣田)


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