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2020.2.29 北村朋幹 ピアノリサイタル



春日井市のご出身で、中学生にしてすでに名古屋フィルと共演するなど、天才ぶりを発揮していた北村さんも、もう20代後半。東京藝大に進み、学部途中でドイツへ留学し今も研鑽を積んでいらっしゃいます。今回の宗次ホールでのリサイタルは約4年ぶりのこと。

北村さんといえば、更にさかのぼって2011年の4月の宗次ホールのリサイタル。そのとき、まさに震災直後の自粛ムードの中にあって、現代フランスの作曲家ミュライユからはじまりシューベルトのソナタに至るプログラムで、その日集まった聴衆に鮮烈な印象を与えました。今回もまた、折しも新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、全国各地でコンサートが続々と中止となる特殊な状況下でのコンサート。しかも現代のラッヘンマンからシューマンへと至る4人の作曲家の作品を並べたプログラムのにも類似性があります。前日、そして当日のリハーサルでもピアノの位置や椅子の具合など、北村さんは細部にまで渡り何度も調整を繰り返し、「これだ」という音を求める手を緩めることはありませんでした。

ラッヘンマンの「ゆりかごの歌」から始まってブラームス晩年の小品、そしてバルトークの強烈な音塊。シューマンの柔らかく広がるファンタジーが真っ白な光の中に消えていき、アンコールにはふたたびこのストーリーをゆりかごの中へと返すためのシューマンの子供の情景より「眠り込む子供」。そしてさり気なく生誕250年のベートーヴェン、バガテルOp.126-3を。この状況下で足をお運びいただいたお客様が作り出した、すべての音を吸収しようとするかのような客席の独特と空気が、この最後のベートーヴェンの愛すべき小さな1曲によってふっと緩んだ気がしました。



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