チェンバロ運搬・調律の裏側お見せします!【2/8 辰巳美納子 チェンバロ】
2月8日の辰巳美納子さんのリサイタルで使用されたチェンバロは
当館でもいつもお世話になっている、梅岡楽器サービスさんによって
高崎から運ばれてきました。
梅岡さんは自社でもレンタル用の楽器を所有していらっしゃいますが
こんな風に、個人所有の楽器の運搬と調律・メンテナンスをすることも
良くあるそうです。
ワゴン車から降ろして
当館の狭いエレベーターでは逆立ちでギリギリ。
舞台袖に上げます。
平面は写真のような滑車のついた梅岡さんオリジナルの台車に載せて運びます。
この台車が大変良く出来ていて・・・
↓ (かませてある横棒は簡単に外せます)
↓ (このとおり)
↓ (あとはこうやって畳めば・・・)
スッキリと収まります。強度も十分。
「この台車の形にも業界でいろいろ流派があるんですよ」と梅岡さん。
さて舞台に運び込んだら、まず足からセッティング。
支柱をねじ込みます。
さらに枠を足の部分で挟んで固定。
ひっくり返して出来上がり。
「とあるコンサートでの話で(梅岡さんが担当したわけではない、とのこと)
楽器本体は持ってきたけれど足を忘れてきちゃって、
仕方がないので折りたたみのパイプ椅子に載せてやったということがあったよ」
とのこと。その様子ちょっと見てみたかった!
このくらいの大きさのチェンバロなら、
大人2人で運べるくらいの重さなので、パイプ椅子でも強度的には代用できそうです。
そして、意外とこれも知られていないと思いますが、
楽器本体はこの上に載せるだけ!
別になにかネジのようなものでがっちりと固定されているわけではありません。
ここからは、しばし楽器の写真をお楽しみ下さい・・・
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さて、この整然とならんだものは
チェンバロの心臓部、ジャックと呼ばれる部分です。
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ジャックを1本取り出してみました。
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先の方に白い小さなツメがついていて
これで弦を引っかいて音を出します。
棒自体は洋梨の木からできていて、
滑らかに上下に動くように、磨き上げられています。
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良く見ると3列になっています。
1音に対して3つのジャックが跳ね上がり、それぞれのジャックが
3本の同じ音(※注:1本は1オクターブ上の音程で調律されている)の弦を引っかく仕組みです。
それによって、あたかもマンドリンや複弦ギターのような
厚みのある独特の音色を作ることが出来ます。
2段の鍵盤のうち、上の鍵盤はジャックが1本だけ、
下の鍵盤はジャックを2本押し上げます。
さらにそれを連動させることによって
最大3本の弦を同時に弾くことができるようになります。
2段の鍵盤が備え付けられているのはそういう意味があります。
1つの音に対して3本の弦、ということは
鍵盤の数の3倍の弦の調律が必要。
さぞかし大変だろうと思いきや、
近年チェンバロ業界にも技術革新の波が訪れたそうで・・・
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なんとこの日の調律は梅岡さんのスマートフォンで調律!!
このチューナーのアプリ、300円だったそうです。
しかも「数年前に何万円もしたようなプロ仕様のチューナーに匹敵するか、
それ以上の機能が入っている」と梅岡さん。
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この画面は様々な調律法の名前が並んでいます。
一番上がピタゴラス音律、下の4つはミーントーン(中全音律)の種類・・・
こうした様々な調律法が既にプリセットされているので
その中から好みの調律法を選んで、あとはメーターを見てあわせれば
物理的には誰がやっても簡単に複雑な調律が出来てしまうんだそうです。
「今日は前半と後半で全く違う調律法に合わせてあるんですよ。
昔は高額な機械を持ち込まないとそういうオーダーには応じられなかった。
でも今はこれがあるからねー・・・」
ちなみに、この日は辰巳さんが指示した、全く辰巳さんオリジナルの調律法を採用しました。
梅岡さんは、スマートフォンに
“辰巳オリジナル(宗次ホール仕様)”と打ち込んで、
すぐにこの調律設定を登録。
「こうしておけば演奏者から“あのときの状態にして”といわれたときに
すぐに対応できるからね」
いやはや、昨年11月に相次いで宗次ホールに登場した
iPad楽譜といい、今回のチューナーアプリといい
クラシック音楽業界もこうして少しずつ新しいものを取り入れて
変わっていくんだなぁと、感慨深いものがあります。
(このアプリを使って本番中客席で演奏者の音程をチェックする、なんて
野暮なことはやめましょう。携帯電話の電源OFF、宜しくお願いします!)
(スタッフ/にしの)