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4月に登場する鈴木秀美さん(チェロ)よりメッセージ!


ここ数日の突然の暖かさで、
宗次オーナーが毎朝手入れをしている広小路通のチューリップの芽が
文字通りすくすく伸びています。ごらんの通り・・・

IMG_0685.jpg

※早朝の地区清掃の際に撮影したのでちょと暗いですが・・・
  背景にテレビ塔も見えます。


さて、今回のご案内は毎年4月頃宗次ホールへの来演が定着しつつある
チェリストの鈴木秀美さんと「仲間」たちの室内楽コンサートです。
左から成田寛さん(ヴィオラ)、竹嶋祐子さん(ヴァイオリン)、若松夏美さん(ヴァイオリン)
鈴木秀美さん(チェロ)、小峰航一さん(ヴィオラ)。

20111021001mini.jpg


今回は二本立てで、4月16日に「五重奏の夜」と題した
モーツァルトとボッケリーニの弦楽五重奏。→詳細へ飛ぶ
そして翌日は鈴木秀美さんが扱っている「ピリオド楽器」についてのお話をまじえた
「春うらら・・・」コンサート。→詳細へ飛ぶ

チラシもこんなに対照的。。。

鈴木秀美(表)mini

これが夜バージョンで

鈴木秀美と仲間たちmini

こちらが昼です。

さてこのお昼の「スイーツタイム・コンサート」について
鈴木秀美さんご本人からメッセージが届きました。

お話は今回17日の演奏会で取り上げる
春にぴったりなハイドンの「ひばり」弦楽四重奏曲について。
ハイドンには格別の思い入れがある鈴木秀美さんですから
午後のひと時のコンサートととはいえ
なかなか盛りだくさんのコンサートになりそうです!



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皆様こんにちは。

宗次ホールには既に何度もお世話になっていますが、
スイーツ・タイム・コンサートのシリーズには初めて顔を出させていただきます。
前夜のコンサートではモーツァルトとボッケリーニの弦楽五重奏を演奏しますが、
スイーツ・タイムで主に取り上げるのはハイドンのクァルテットです。
Op.64はOp.54,55と共に「トスト・クァルテット」とも呼ばれますが、
ヨハン・トストというのはエスターハーズィ宮廷のオーケストラで
第2ヴァイオリンのリーダーを務めていた人です。
ただ、彼のヴァイオリニストとしての存在に関係して名前が出来たのではなく、
彼に印刷のための仕事が託されて出版されたことからその名前がついています。

その5曲目がこの《ひばり》の名前で知られているクァルテットです。
冒頭、つつましやかな伴奏型を弾いているところへ、
やや甲高い感じで1st violinが入ってくることがひばりを思わせるということなのでしょう。
しかし、他のハイドンの曲と同様この名前はハイドンと何の関係もありません。
彼のシンフォニーやクァルテットなどに付いている名前の多くは、
18世紀終わりから19世紀初期にそれらを聴いた聴衆、
主にロンドンの人々が呼び慣わしていったものと考えられますが、
音楽そのものと関係がないタイトルも数多く見られます。
しかし、これを聴いてひばりを連想した人の想像力はなかなか豊かだと思いませんか?

楽譜1

出だしの旋律でタイトルが付いてしまっていますが、
この曲の緩徐楽章は圧巻の美しさです。
滋味深いという言葉がぴったりの旋律が、
戻ってくるたびに少しずつ変奏されて鮮やかになっていきますが、
派手というのとは少し違います。

楽譜2

3楽章、メヌエットは、ハイドンの創意工夫が最も良く発揮されるところといっても良いでしょう。
クァルテットでも交響曲でも、メヌエットは大体フレーズのパターンや長さが決まっているので、
似通った長さになります。
そんな枠組みの中でハイドンは奇抜なアイデアを存分に用いて実に多彩なメヌエットを作りました。
この曲では、3拍目に現れる装飾音がちょっと蛙か何かの声のようでもあり、笑いを誘います。
そういえば、「蛙」というニックネームのクァルテットもあります(Op.50-6)。

楽譜3

メヌエットは舞曲で、常にトリオと呼ばれるBパートがあります。
こちらは打って変わって少しバロック風、半音で下行してゆくバスが印象的です。

楽譜4

そして最終楽章は「常動曲」といってもよいほど1st violinがずっと動き回る曲で、
1楽章がひばりならこちらは何の動物か、と考えたくなるほどです。

楽譜5

さて、この曲は1790年に作曲されましたが、
それはエスターハーズィの宮廷にハイドンがいた一番最後の時期です。
9月に『豪奢王』と呼ばれたニコラウス・エスターハーズィが亡くなり
ハイドンは年末ロンドンに向けて出発、彼の遅咲きの、しかし驚く程の大成功が始まります。
ハイドンが正式にエスターハーズィの副楽長となったのは1761年5月、
おそらくその数年前から彼は侯爵家に出入りし、
その頃から既に弦楽四重奏曲を書き始めていました。
弦楽四重奏という演奏形態はハイドンが作り、完成させたと言えるものです。

以後、一流と言われる作曲家達は皆、弦楽四重奏曲を作曲しました。
モーツァルトは6曲のセットを書いてハイドンに献呈しましたが
(そこからハイドン・セットと呼ばれます)、
そのうちの一部はモーツァルトのウィーンの家で、
ハイドン、モーツァルトにディッタースドルフとヴァンハルを加えた4人で演奏されました。
聴いていたモーツァルトの父、レーオポルトに、
ハイドンが彼の息子の才能を大いに称賛したという話は有名です。

この曲が出来た頃、或いは彼らが曲を弾いてみていた頃使われていた楽器は、
現代一般的に使われている楽器とは状態が少し違います。
ヴァイオリンとヴィオラに顎当てや肩当てがなく、チェロにエンドピンがなく、
ガット弦で、弓の形状やバランスも違う……
そんな少しずつの違いの集積が、全体の響きに大きな違いを創り出します。
演奏の仕方、楽譜の読み取り方もいろいろと違うのですが、
それを言葉で説明するのは困難ですから、
どうぞ会場にお出でいただき、違いをお確かめになって下さい。

今回は、せっかく前夜クインテットを演奏していますので、
弦楽四重奏にもう一人加わると響きがこんなに変わるということもお聴きいただきたく、
モーツァルトの有名なト短調の弦楽五重奏曲K.516 から一部分も演奏する予定です。

《弦楽五重奏の夜》と《スイーツ・タイム・コンサート》、併せてお楽しみに!


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というわけで、一般にはマニアックで近寄りがたく思われがちな
「弦楽四重奏」や「ピリオド楽器」の世界を
鈴木秀美さんのトークと演奏で是非この機会に親しんでみてはいかがでしょうか?


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