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間近にせまる!! 第2回宗次ホール弦楽四重奏コンクール


9月12日〜14日には
「第2回宗次ホール弦楽四重奏コンクール」が開催されます。
※ コンクール日程や内容、出場団体の詳細はこちら

2011年9月にその前身である「名古屋アンサンブルフェスタ」から
格上げし弦楽四重奏に特化した企画として開催されるこのコンクールは
若い世代の人々に、弦楽四重奏を学び発表する場を提供することを目的にしたものです。
また、それと同時に、聴き手の皆様にも弦楽四重奏が持つ魅力を知っていただく場にしたい
という願いもこめて、2年に一度開催されます。今回はその第2回となります。

この弦楽四重奏コンクールが世界的にも珍しいのは、最終日の演奏審査の前に
2日間のマスタークラスで講師のレッスンが受けられること。
マスタークラス
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 第1回開催時のマスタークラスの様子 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 

この事は、結果ではなく過程を重視するというこのコンクールの性格が表われています。
そして3名の審査員によるレッスンを聴衆の皆様に公開するということは
「カルテットの音楽作りの裏側」をつぶさに観察していただくことでもあります。
このことが聴衆と演奏者をより強く結びつけ、弦楽四重奏への興味を深めるものになると
考えています。


今回は第1回弦楽四重奏コンクールにも出場した2団体の代表に
このコンクールの魅力についてうかがいました。
マスタークラスからコンクールまで、実際にその場にいたからこその
“生”の声にはこのコンクールを楽しむヒントが潜んでいます!

インタビュー① ココット弦楽四重奏団 平光真彌さん
前回の第1回宗次ホール弦楽四重奏コンクールには「クァルテット・アトム」として出場し
優勝した平光さん。今回は新しいメンバーとともに「ココット弦楽四重奏団」として出場。

第1回 アトム 第2回 ココット
第1回表彰式での1ショット      今回出場メンバーと


Q.そもそも、弦楽四重奏に取り組みたいと思うのはなぜですか?
弦楽器奏者にとって、同属楽器による豊かな音域によるアンサンブルはとても
魅力的ですし弦楽四重奏のために書かれた素晴らしい作品があまりにも多すぎて
弦楽器奏者としてこれに触れない訳にはいかない、という意欲にかられます。

Q.宗次ホール弦楽四重奏コンクールの最大の特徴である、
  審査の直前に審査員のレッスンを受けることについて
  良い点、あるいは難しかった点について教えてください。

レッスンでアドヴァイスいただいたことを、コンクールという大舞台で
すぐに試すことができそれに対し先生方からすぐにまたアドヴァイスをいただける
ということは、良い点としてとらえています。自分で良いと思って弾いていても
実際はそのように届いていないこともあるので、すぐに客観的なご意見が
いただけるのは本当に貴重な事です。

Q.マスタークラスの中で特に勉強になった点。
  印象に残った講師の先生の言葉などはありますか?

先生方全員が豊富なクァルテット経験者ですので、先生のおっしゃっていただけることが
机上の空論ではなく全て実体験に基づいており、説得力が強いです。
それが、曲の中身の話であれクァルテットの機能の話であれ、全て音楽の本質に迫るものと
感じています。私にはとてもすべて消化しきれませんが、先生方のアドヴァイス一つ一つが
勉強になります。

Q.マスタークラスや審査を見に来て下さる一般の方に
  このコンクールの楽しみ方を教えて下さい。

今回はアマチュアの方も参加されます。
愛知で一度にこんなにたくさんのクァルテットグループが集まることはとても珍しいですし
音楽の作り方もそのグループにより全く違ってきますから、その個性の違いをお楽しみ
いただければと思います。

Q.今回再度出場されるということで、意気込みなどを教えてください。
今回は新しいメンバーで参加させていただきます。やはりメンバーが変われば
音楽の作り方もガラリと変わりますので、初心に返り、新たな気持ちでレッスンに臨み
コンクールでは今自分たちにできる音楽を精いっぱいやりたいと思っています。(終)


インタビュー② ザ・ビストロ・ダブリュー 桜田悟さん
前回の第1回宗次ホール弦楽四重奏コンクールは自由曲にウォルトンの弦楽四重奏曲を
今回はコルンゴルトの弦楽四重奏曲という珍しい曲を選んだ個性派カルテット
「ザ・ビストロ・ダブリュー」。桜田さんはその第1ヴァイオリン奏者。

第1回 ビストロW 第2回 ビストロW
第1回出場時の演奏の様子        2度目の出場となるメンバーと共に


Q.そもそも、弦楽四重奏に取り組みたいと思うのはなぜですか?
The Bistro W(以下ビストロ)のメンバーはそれぞれ音楽大学や、音楽コースのある
高校で学んできました。そうした環境の中で、気のおけない仲間と音楽の時間を
共有すること自体に素直な幸せと楽しさを感じてきたのが、今日自らのアンサンブルの
グループ持つきっかけだと思います。

室内楽アンサンブルには、メンバーがそれぞれの息遣いや音楽性を汲み取り
一つのまとまったものに仕上げるというソロやオーケストラにはないプロセスがあります。
ソロは自分との戦いであり、自身の葛藤と唯一無二のアイデンティティの探求のために
修練してゆくものです。オーケストラでは個人は集団のためにあるべきです。
ある一つのオーケストラの文化と言語に深く共感し、良き住民の一人になることによって
多勢を以って一つの目的を掲げなければなりません。

室内楽では、個人と個人の関係を深く追求します。室内楽に於いて個人と個人は極めて
平等であり、お互いの個性を認め合いつつ音楽的に切磋琢磨することにより、音楽家は
自らの確固たる存在価値を見出すことができます。自らの音楽家としての存在を実感
できるということは、自由の発見に繋がります。何故なら、自分が何者か分からないうちは
自分が何をすべきか何をしたいかわからないからです。ただ本能的な欲望に従うままに
出現する行動は本当の自由とは言えません。自分がその世界の中で何者かを自覚した時に
自分の存在理由を達成すべく、自由を欲するのです。室内楽の空間では
この「自由」という概念が極めて高いレベルで許されます。往々にして芸術家というものは
自由というものを欲しがるのです…。

というようなことで、私達は普段は弦楽四重奏に拘らず、弦室内楽全般を愛し
また演奏しているのですが(私個人としてはピアノ五重奏のサウンドが一番好きです)
ピアノとのデュオのソナタ、ピアノ三重奏、弦楽四重奏、ピアノ五重奏、弦楽六重奏など
(管楽器や声楽が入ったものも勿論ですが)全ての編成に於いて表現のレンジや質
またそれに伴う演奏の仕方が違います。その中で弦楽四重奏は特異な地位を占めていると
感じます。

中世からルネサンス、バロックに移り変わる間に、器楽アンサンブルという
ものは違う響きのものの組み合わせから同一な響きを良しとする方向に変わってきました。
その究極が弦楽四重奏だと思います。当時の教会では、世俗的な響きがする楽器は基本的に
禁止されていました。教会での音楽を司るのはオルガンと声楽であった訳ですが、特に神に
捧げる祈りは声楽でした。弦楽四重奏と混声四部合唱には多くの類似点があります。
ソプラノ、アルト、テノール、バリトンという並びはそのまま第1ヴァイオリン
第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと置き換えられますし、各パートの組み合わせは
人声属とヴィオール属、まさに同じ音質の組み合わせです。ヴィオラとチェロがしばしば
人の声に似ていると云われる事も弦楽四重奏と混声四部合唱の結び付きを
より一層強くします。

今でこそ日本のキリスト教式結婚式などではよく生の弦楽四重奏の
BGMが使われますが弦楽四重奏には人々が昔から神に捧げて来た声楽と同じ
「聖なる響き」が再現出来ると思うのです。弦楽四重奏を通して「聖なる響き」を
研究することは、西洋音楽をより本質的に理解してゆくために必要な事だと考えます。
ビストロが活動の中心に弦楽四重奏を据えているのは、全てのクラシック音楽への
アプローチのために、弦楽四重奏の哲学がバックグラウンドとなると信じているからです。

Q. 宗次ホール弦楽四重奏コンクールの最大の特徴である
  審査の直前に審査員のレッスンを受けることについて良い点
  あるいは難しかった点について教えてください。

私達のような駆け出しの奏者にとっては、どんな時であれ素晴らしい先生方のレッスンを
受ける機会を頂けるのは嬉しい事です。公開ということもあり集中力も高まっているので
ビストロのような未熟なグループはコンクールの期間中だけでも目に見えて変化するほど
だと思います。これは他のコンクールでは経験出来ない事です。

一方で、せっかく先生に教えて頂いた事をもう少し時間を掛けて習熟してからコンクール
での評価を受けたいと思うことも事実です。三人の先生方の教えの本質は、文字通り
三日三晩で習得出来る代物ではありません。また、弦楽四重奏というジャンルの性格から
しても、私達にとって新しい概念の導入は、入念な練習と本質的なイメージの共有を必要
とするのではないかと感じます。ただコンクールを聞きにいらっしゃるお客様にとっては
先生方の手中を色々な形で垣間見るチャンスだと思いますので、興味深いのだと思います。
是非私も一度評価されない立場での宗次弦楽四重奏コンクールの見学をしてみたいです(笑)

Q.マスタークラスの中で特に勉強になった点。
  印象に残った講師の先生の言葉などはありますか?

三人の先生方のレッスンは、その全ての瞬間に於いてビストロのメンバーにとって
素晴らしい思い出と貴重な糧を残してくださいました。原田先生には弦楽四重奏の奏法
百武先生には楽曲の(ウォルトンの四重奏曲をレッスンして頂きました)実践的な表現法
レメシュ先生には音楽との向き合い方を教えて頂いたように思います。

余談ですが、第1回を受けさせて頂いた時に、ビストロは選曲したスメタナの楽曲の
レッスンを百武先生にと希望していたのですが、コンクール前に事務局からの連絡で
「レメシュ先生が、スメタナなら是非自分がレッスンしてあげたいから」ということで
レメシュ先生に変更になりました。そしてレッスン当日の舞台袖で、「君達、この曲を
選んでくれてありがとう」というようなことを仰っていただき、本当にレメシュ先生は
この曲を愛しておられるんだなと感じました。

同時に、弦楽四重奏のみならず音楽芸術に取り組む時は、その作品をいかに愛するかが
完成度と深い理解を得る原動力となるんだと再確認しました。レメシュ先生持参の
書き込みと使い込みでボロボロになったファーストのパート譜は忘れられません。
音楽を極めるということの一端を見たような気がしました。

更に余談ですが、百武先生のマスタークラスにて、宗次ホールのお客様の面前で
「あら、今ゴミみたいな音したけど」と言われたのは最強に痛快でした。
一周回っていい思い出でございます。

Q.マスタークラスや審査を見に来て下さる一般の方に
  このコンクールの楽しみ方を教えて下さい。

出場するグループは、年齢や演奏スタイル、キャリアや、そして実力など多種多様
だと思いますが、自分達の音楽を聴いて貰いたいという気持ちと、弦楽四重奏が
大好きだということだけは、皆一緒だという風に思っております。

そしてご来場下さるお客様には、私達のそうした魂を感じ取って頂き、積極的に
私達の音楽に関わって頂きたいです。自分達でしっかり練習し、研究し、披露する
のが勿論基本ですが、生の音で聴いてくれる人の耳に受け入れられた時に
音楽芸術というのは次のステージに到達するのだと心得ております。そういった
瞬間を宗次ホールにてお客様と共有出来たら素晴らしいことです。

ただ、コンクールという現実がそういった体験に適しているかどうかと言われれば
疑問ですが(お客様にも評価される立場でありますので)、それこそそういった空間が
表現されたかどうかも見ていて下されば、評価される立場としても嬉しい限りで
あります。

あと、ある意味こちらが本題ですが、室内楽というものはソロのように一人の人の
世界観を楽しむものではありませんし、かといってオーケストラのように多勢が同じ
理想に向かってゆく迫力を楽しむものでもありません。ソロとオーケストラのどちら
の特徴も有しているのが室内楽であり、そこで浮き彫りになるのが人間関係です。

ソロでは、伴奏は常に主役に追従するべきなので、音楽から人間関係は見えてきません
(見えてきたらそれは室内楽アンサンブルですね)。逆にオーケストラは人の集まり
なので当然人間関係はあると思いますが、相関図を描くには人数が多過ぎます。
室内楽は、各パートが非常に能動的な性格を持つし、しかもカルテットくらいの
人数だと、音を聴くだけで人間関係が想像出来たりします。あのカルテットの
セカンドとチェロはデキてそうだとか、このカルテットのヴィオラの男の子は
ファーストの彼女に惚れてるんだねとか、見た目からもそうですが、音から想像して
みると面白いかも知れません。そういった下世話な見方をすれば、ビストロのような
男女混合グループは必見かも知れません(ウチはとても健全ですが!)。

女三人対男一人のカルテット(その逆でも)なんてもう最高です。もっと言えば男四人の
カルテットも一部には想像力を掻き立てそうですね。ハイドンばっかりで万が一飽きて
しまったらオススメの楽しみ方です。

Q.今回再度出場されるということで、意気込みなどを教えてください。
第一回に出場させて頂いた時には、アドヴァイスは先生方だけではなく
当然お客様からもアンケートという形で頂戴しました。そこでは、そもそも
私達に好意的なお客様を集めて行う自主的なコンサートでは頂けない様な
叱咤激励のお言葉を多数頂き、自分達のパフォーマンスが人にどう映るかと
いうことを学びました。同時に、公的な立場で評価される音楽家として、
社会の中で自立した存在になるためにはどうすべきかという課題を、真剣に
考えるきっかけとなりました。第一回から二年、劇的な成長や大きな成果は
出せていないのかも知れませんが、色々なものに影響されつつ変化してゆく
ビストロを信じて、思い切って演奏したいと思います。(終)

14日(日)のコンクール本選では、お客様による投票で決まる
“聴衆賞”も行います。
この機会にぜひ、若者達の成長の様子と弦楽四重奏のおもしろさ。
そして、コンクールのおもしろさを体感してみて下さい。


(編集/宗次ホール)


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