矢田川のバッハ 【2/4 スイーツタイムコンサート】
2月4日のスイーツタイムコンサートは
チェンバロ奏者、鈴木美香さんと、
CBCアナウンサー小堀勝啓さんの朗読で楽しむコンサート。
朗読の中身は、名古屋市が行っている短編小説コンクール
「ショートストーリーなごや」の第5回で入選作となった
伊藤由美子 作の「矢田川のバッハ」です。
海外で長らく暮らしていて、久しぶりに帰国し
名古屋での生活を始めた親子と矢田川沿いの風景、思いがけない出会いを
丁寧に描いた物語です。
(上記ショートストーリーなごや公式サイトで読むことも出来ます!)
物語のなかで重要な役割を果たすのは
インドの香草「コリアンダー」とバッハの「ゴルトベルク変奏曲」
ゴルトベルク変奏曲のバリエーションの間に物語が少しずつ進み、最後には
また最初に登場したメロディーが戻ってきて季節が進んでゆく、という流れです。
前半はチェンバロという楽器について演奏とともに軽くご説明。
小堀さん
「いや~、豪華ですね~。これお宝鑑定団に出したら一体おいくらくらいの・・・」
と、お客様の笑いを取りながら和やかな雰囲気で始まりました。
この日持ち込まれた楽器の製作者である安達正浩さんにも
急遽トークに加わっていただき・・・
小堀さん「この楽器を作るのにどれくらいの時間が?」
安達さん「延べ3ヶ月くらいですかね~・・・でもいつも作業に集中しているわけではなくて
こうして演奏会のお仕事もありますし、同時並行で何台か作っているので、
実際にはもっと時間が掛かりますね~」
小堀さん「じゃあお店に行って“すみません、これ下さい”ってものじゃないんですね?」
安達さん「そうですねー。完全受注生産です。
今日本でチェンバロ製作だけを生業としている職人が
おそらく10名程度だと思います。」
小堀さん「なるほど、この絵とか、足の彫刻とかも安達さんがやられるんですか?」
安達さん「基本的には僕が全部一人でやります。
ただこの楽器の場合は足の部分などは、友人の仏師に頼んでやってもらってます」
小堀さん「なるほど、それで仏壇のような感じがね~。
さて、演奏会の後に安達さんが解説してくださるそうですので、
是非皆さん見ていってくださいね。あ、そこは別料金となっております」(笑)
続いては、「矢田川のバッハ」の作者、伊藤由美子さんをお招きしてインタビュー。
小堀さん「伊藤さんはもう何本か小説をお書きになられて・・・?」
伊藤さん「いや、この“矢田川のバッハ”が実は初めて書いた小説なんです」
小堀さん「え! すごいですね。矢田川の風景が目に浮かぶようで、
その描写はとても初めて書いたものとは思えないですが」
伊藤さん「この物語の主人公の親子と同じように私もしばらくアメリカで暮らしていました。
久しぶりに名古屋に戻ってきたときに感じた懐かしさと同時に違和感のようなものを
書き留めていて、それをもとに物語にしてみたんです。」
小堀さん「伊藤さんもやっぱりバッハがお好きですか?」
伊藤さん「そうですね、小学生の子供がヴァイオリンを習っていて、その影響で・・・」
後半は50分にわたるゴルトベルク変奏曲と朗読のコラボレーション。
チェンバロと朗読の絶妙な掛け合いで「矢田川のバッハ」の物語の魅力がより広がったように
感じられたのではないでしょうか。
安達さんも
「僕もフランスで修行を積んで名古屋に帰ってきたときに
仕事が無い、知り合いもない、という居心地の悪さと
この先どうしようという不安があって、
だからこの物語の登場人物に共感するものがあるなぁ・・・」
と仰っていました。
終演して、出演者と作者伊藤さん、そして宗次オーナーとの記念撮影です。
そして、小堀さんがお話されたことによって
客席からどっとお客様が押しかけこの状態!
安達さんのミニレクチャーはじまりました。
有る意味人気アーティストのサイン会よりも熱気が感じられました。
こんなに関心が高いお客様が集まっていらっしゃったとは嬉しいですね!
ただ「うちにも1台作ってくれ」という方は
さすがにいらっしゃらなかったようです。
⇒人にうもれるチェンバロの図
(宗次ホール/にしの)