【アーティスト・インタビュー】アンドレ・ラプラント
♪宗次ホールのコンサートがもっと面白くなる読み物 (アーティスト・インタビュー)♪
それは、正しい音をただ鳴らすことと、音楽を創ることの違い。
ラプラントはその核心を熟知している。
その録音に、私は衝撃を受けた。
激情の波、豊かな流れ。
そして何よりも、一貫した研ぎ澄まされた音質。
これこそが彼の演奏を他と一線を画したものにしている。
(トロント・スター紙/カナダ)
アンドレ・ラプラント。
この名を知る人がこの日本にどれ程いるのでしょうか?
2015年のショパン国際ピアノコンクールで2位に輝いたシャルル=リシャール・アムランを育てた人物としてご存知の方はいるかもしれません。
1978年のチャイコフスキー国際コンクール、史上稀にみるハイレベルな大会として語られるこの大会で2位を受賞したラプラント。
1位は今や巨匠となったミハイル・プレトニョフ、2位を分けたのは現在日本でも頻繁に公演を行うパスカル・ドゥヴァイヨン、3位にはニコライ・デミジェンコ、と歴史に残る大会となったのでした。
それから40年、ラプラントは日本で演奏する機会がなく北米を中心に演奏活動を続け、その音楽は今や至高の域に達しています。
世界の未知なるヴィルトゥオーゾを目の当たりにできる又とない機会!お聴き逃しなく!
文責:宗次ホール企画担当 廣田 政子(ひろた まさこ)
アンドレ・ラプラント
ピアノ
André Laplante Piano
ロマン派音楽の偉大なヴィルトゥオーゾとして評価されているカナダ人ピアニスト。
2015年にはイギリス連邦からカナダ勲章-オフィサーを授与された。
また、2015年ショパンコンクール2位を受賞した、シャルル・リシャール=アムランを育てたことでも知られる。
ジュネーヴ、シドニーの各コンクールでの活躍につづき、チャイコフスキー国際コンクール(1978)2位受賞、ケベック州音楽評議会より、年間を通して最も優れた公演や演奏家にのみに贈られる名誉あるオーパス賞を複数回に渡り受賞している。
これまでに、サー・ネヴィル・マリナー指揮ミネソタ響、アンドリュー・ディヴィス指揮トロント響、ユーディ・メニューイン指揮ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団、モントリオール響、シカゴ響、カーネギーホール及びチェコフィル、サンクトペテルブルグ響などに招待され、共演を行う。
トロント音楽祭、オーフォード音楽祭、ラノディエール国際音楽祭などの主要な音楽祭にも度々招かれる。
録音活動も積極的に行っており、アナレクタレーベルから発表された録音から、Felixレコード賞を1995年に「リスト」、1996年「ブラームス」で連続受賞。
チャイコフスキー国際ピアノコンクール、オーストラリア国際音楽祭、カナダで最も権威のあるCBCコンクール、ホーネンス国際ピアノコンクールを始め、数々の国際コンクールにて審査員として招かれる。
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(質問)
日本でも知名度の高いプレトニョフと同じ回、チャイコフスキー国際コンクールで2位を受賞したにも関わらず、40年もの長きに渡り来日をしなかった知られざる巨匠、ラプラント。もちろん当館への来演も今回初めてですが、様々なインタビューを読み進めていく内に、“スーパースター”という地位や輝かしい名声とは自ら線を引き、ひたすら自分自身の芸術を職人のように磨き続けてきた真摯な音楽家であることが伝わってきました。カナダ・北米での活動に関しても、かつて所属していた大手コロムビア・レコード社を離れて個人の小さな事務所に所属しているようですね。
○(答:ラプラント 以下L)2、3年先の演奏会の依頼を頂くと、その時点では問題なく見えるのですが、実際その時を迎えると、自分がどれだけの演奏会を抱えているか、わからなくなったりします。数をこなすより、深く音楽に向き合いたいのです。
例えば、ピアニスト、リチャード・グードは“スーパースター”といった類ではないかもしれませんが、ベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」のフーガなど、完璧に弾くのはもはや不可能と思われるものをどうしてあんなに弾きこなせるんでしょうか?!自分自身がどう弾きたいか、明瞭にイメージして、完全な形で演奏に反映させている。自分が何を表現したいかが明確で、音楽に完全に入り込んでいる…正に、音楽家の中の音楽家です。私は、彼のような芸術家としての歩みを心から尊敬しますし、自分自身も、いつかそのようになりたいと心から思っています。
●そう仰るラプラントさんですが、彼を知る音楽家達は、先ほどの台詞をまるで知らず知らずの内に鏡写しするかのように、こんな風に述べています:「ラプラントは、ピアニストの中の、ピアニスト。真に美しい音を持った数少ないピアニストの一人で、理想とする音の追求をし続けている音楽家です。」 (トリスタン・ローバー/ピアニスト)
さて、今回はラプラントさんが特に得意とされるショパンとリストのプログラム。まずそのショパンの演奏は、「ラプラントの演奏するショパンが素晴らしすぎて、忘れられず、また招待してしまいました!! 」とショパン・ソサエティ(カナダ)などからも大絶賛され、度々ラブコールを受けているほど!ショパンのソナタ第2番は録音もされていますが、その録音は、“巷にショパンの良い演奏は星の数程あるが、ラプラントの音楽性、その演奏は他を差し置いてとにかく強烈な印象”(クラシック・トゥディ)と非常に高い評価を得ています。
(L)ショパンとリストの、ピアノ演奏における貢献は計り知れません。ショパンはロマンティックな作風でありながらも作品の基礎や形式に於いては古典的。その作品は(リスト程)音も多くなく、最小限に留められた音の中で透明感のある音色が求められます。
リストは正に革命児。彼自身が偉大なピアニストであったことから、ピアノという楽器の可能性を最大限に引き出しているのは、皆さんご存知の通りです。ベートーヴェンが始めた、ピアノのために管弦楽的な作品を書く、という発想を掘り下げたのはリストですし、ハーモニーや形式も当時に於いては大変冒険的でした。
ベートーヴェンの時代には、オーケストラを雇って自作曲を披露するというのは大変なことでしたし、また、他人の作曲した曲を演奏会で取り上げるという文化はその頃は一般的ではありませんでした。
その点、リストがベートーヴェンの交響曲をピアノソロ版に編曲するなどして、当時の人々が耳にする機会の少なかった優れた作品達を多く取上げ、披露したことも特筆すべき貢献です。
●前述したとおり、前回のショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ)にて2位に輝いたシャルル・リシャール=アムランさんも、“最も影響を受けた人物”として、師事したラプラントさんを挙げています。
またアムランさんが「人生を変えた5曲」というCBCミュージックによるインタビューで、ラプラントさんの弾く、リスト:ロ短調ソナタを併せて挙げていらっしゃいます!
“ラプラント先生は私に、自分の直感を信じること、内なる声に耳を傾けること、を教えてくださいました。私をここまで導いてくれた、絶対に欠かせない存在です。ラプラント先生は膨大なCDを量産しているわけではありませんが、本当に、全て最高レベルです。彼の弾き方はどの作品に於いても常に私の指針であり、手本です。特にリストのロ短調ソナタは、私にとって、もう至高の1曲。作品の持つ雄大さを存分に表現するオーケストラのような響き、壮大な音なのに、荒々しさは一切存在しない。超絶技巧を披露することが最終的なゴールとなっていないからです。しかし、相反するように聞こえるかもしれませんが、難解な箇所を楽々と弾いては意味がないのです。…意味、わかりますか?難解な箇所とは、困難に直面しつつ、苦悶の表情でそれに打ち勝とうとする葛藤を表現すべきなのです。そんなドラマ性もラプラント先生は全て、汲み取っている。…リストのソナタといえば、ラプラント。私にとっては一生、そうだと思います。私がこの曲を自分で弾きたくない理由の1つです!(笑) あまりに完璧だから。これ以上私が付け加えるべきことなど、一切ない、と。本当にそう思っています。”
(シャルル・リシャール=アムラン、CBC Music)
(L)リストの作品を演奏することは難しいと思います。かなり自由な形式ですし、たくさんの方がリストの作品を単に技巧的なものとして扱っていることも、事実です。鍵盤を叩くだけで、詩情や音楽性が全く残されていない演奏も多く耳にします。もちろん、日々の練習など、メカニックな面を切り離すことはできません。
ですが、私がリストの作品を演奏する理由は、彼の作品の詩情豊かな面、音楽的な面を提示したいからに他なりません。音楽家が表現のコンセプトを決め、自分自身の声を見つけ、表現のための言葉を磨いていくことは膨大な時間かかる、長い旅なのです。
●最後に、メッセージをお願いいたします。
(L)聴衆が自分の音楽から何かを感じてくれている、というのは演奏をしていても伝わってくるものです。
だからこそ、現役で演奏を続けているのです。より深い集中力をもって音楽創りに取り組み、聴いてくださる方々に、より多くのものを与えたい。そういう気持ちになります。
ステージ上で自分が創りだす音、投影している響きに深く耳を澄まし、集中して聴くことが、素晴らしい芸術創造の瞬間へとつながります。つまり、そこに居合わせる人間全員が、音楽を創る一員となるのです。
『人々をひとつにする』こと。これこそが、芸術の真の目的なのです。ギャラリーで絵を鑑賞しようと、演奏会に出掛けて音楽を楽しもうと、同じ。全ての芸術の目的とは、正にそこなのです。
【参照】
Classic Today.com: Chopin Sonata No2, etc /Laplante
La Scena Musicale: Andre Laplante “Fine Balance”
The Star.com: The difference between playing notes & making music
CBC Music: C.R.Hamelin: 5 pieces that changed my life
Conversations with Keith- Pianist Andre Laplante
アンドレ・ラプラント ピアノリサイタル
※プログラムが変更になっております
【プログラム】
ショパン:幻想曲 Op.49/
ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35《葬送》
リスト:巡礼の年 第2年「イタリア」より
「ペトラルカのソネット 第104番」
ソナタ ロ短調 S.178
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4月17日(火)
18:45 開演(18:15開場)
一般¥4,500/学生¥2,700
全指定席
指定席
[チャリティーシート¥4,950]
チケット有!
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