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2018年1月14日(日)「エソポのハブラス」徹底解説!


知れば知るほど面白くて演奏も素晴らしい。
知らずに通り過ぎるのはもったいないこの公演
2018年のニューイヤーコンサートとして全力でお勧めします 。

日本人と西洋音楽の意外な接点に迫る、

壮大でコミカルな歴史物語


2018年1月14日(日)「エソポのハブラス」徹底解説!


・・・400年前、私たちのご先祖様は、西洋の文学と音楽に出会っていたという衝撃の事実



Q.エソポのハブラスとは??


A.日本で初めて出版された西洋文学「イソップ寓話」のことです!

今から400年以上も前の安土桃山時代、南蛮船の渡来によって鉄砲やキリスト教、そして西洋の音楽と文学が日本に入ってきていました。
ところが宣教師たちが活版印刷機を日本に持ち込み、約20年間で50種近くの“キリシタン版”と呼ばれる書物を印刷出版していたことはあまり知られていません。
なぜならキリスト教禁止令後、そのほとんどが破棄されてしまったからです。
しかし、大英博物館にはそれらの一つ、「エソポのハブラス(ESOPONO FABVLAS)」の原本が残されています。
イソップ 

これは和訳された「イソップ寓話」をローマ字で表記したもので、宣教師の日本語習得の教材として作られたのだろうと考えられます。
そして、おそらく布教活動の折々に、日本人にも読み聞かせていたことでしょう。


イソップ1
▲天草コレジオ館に今も展示されている活版印刷機



「イソップ寓話」の起源は紀元前にさかのぼり、その内容は古代ギリシャの奴隷イソップの伝記と、彼が語る機知に富んだ処世訓の二部構成になっています。
中には長い年月をかけてイソップ作ではない“イソップ風”の民話や伝承も吸収されているのも興味深い点です。日本人にも「アリとキリギリス」や「ウサギと亀」「北風と太陽」など、なじみ深い話が沢山ありますよね。そういった寓話を400年前、宣教師たちが日本の人々に読み聞かせていた・・・なんて考えてみると凄いことだと思いませんか?
このコンサートは「エソポのハブラス」を一つの小道具として使いながら、当時、キリシタン大名として肥後の国の南部の領主をしていた小西行長の家臣の妻でやはりキリシタンだった竹田イネス(ソプラノ役)と宣教師ゴンサロ(テノール役)の二人をめぐって展開する、音楽による歴史物語です。




Q.竹田イネスって誰?

A.実在し、ヨーロッパにも伝えられた悲劇のヒロインです。
今の熊本、当時の肥後の国に位置する八代は、1587年に豊臣秀吉が九州に進軍した際、貿易拠点として目を付けた街。この八代に秀吉が滞在中、面会しようと訪れた司祭ルイス・フロイスは、この街の美しさを書き残しています。
当時この地域の領主だった小西行長は熱心なキリシタンで、その影響から八代の領民2万5千人もキリスト教に入信したと言われます。驚くべきことですが、当時の八代では聖歌隊が歌う西洋音楽が響いていたのです。
しかし、行長は関ヶ原の合戦で西軍に付いて敗れ、キリスト教の精神に基づき、切腹を拒んで斬首されてしまいます。次の領主、加藤清正は領民に棄教を命じますが、行長の家来の一人、竹田シモン五兵衛とその妻イネスは最後まで信仰を貫き、清正によって非業の殉教を遂げます。
八代で殉教したキリシタンは11名。
その様子は宣教師によって詳細にローマへ報告されました。
この中で「イネスは敬虔なクリスチャンの鏡であり、喜んで殉教した崇高なる女性である」と伝えられ、18世紀のイタリアではこれを基にしたオペラの台本が書かれたほどでした。




Q.物語に“河童”が登場するって?

A.宣教師のあの髪型……もしかすると河童伝説に深い関係があるかも。
なんと、宣教師が着ていたマントのことをポルトガル語では「Capa」と言います。
そしてザビエルの絵で良く知られているあの髪型・・・。
九州地方で特に河童伝説が多いのも、この地域で宣教活動が活発だったからかもしれません。
それに当時の日本人が奇抜な格好でよくわからない言葉を話す宣教師たちを妖怪に思ったとしても不思議ではないでしょう。
この「宣教師=河童」説が、このコンサートの重要なテーマの一つとなっており、宣教師ゴンサロも河童に間違われます。
そんなちょっとしたこと一つとっても、私たちが「日本的なもの」と思っているものが、実は西洋文化との接触によってもたらされたものかもしれない、という愉快な想像を掻き立ててくれるのです。




Q.で、どんな音楽が演奏されるの?

A.当時、宣教師たちが船出したイベリア半島の音楽、日本でも歌われていた聖歌、それに今の天草に伝わる民謡を取り入れ、戦国時代に日本人が耳にしたであろう曲を選びました。
まずキリスト教の聖歌は欠かせませんが、それだけではないのがこのコンサートの面白いところ。日本におけるこの時代の音楽演奏の第一人者である、アントネッロの音楽監督にして、世界的リコーダー&コルネット奏者の濱田芳通氏が長年温めてきた企画だけあって、選曲から演奏スタイルまで実に手が込んでいます。
使用するのは当時用いられていたものを復元した楽器で、登場人物である宣教師ゴンサロたちが船出したポルトガル、スペインのルネサンスの音楽をふんだんに取り入れて構成されています。
ただし当時は即興音楽が中心でしたので、楽譜通りと言うことではなく、「おそらくこんな風に演奏に興じたのではないか」というファンタジーを交えているのが面白いところ。
右のプログラムを見ると知らない曲ばかり(そもそも作者不詳だらけ!)ですが、決して身構えることはありません。
どれも「あれ、どこかで聴いたような・・・」という分かりやすいメロディーとノリノリのリズム。
それもそのはず、私たちの祖先が聴いたかもしれない曲なのですから、遠い記憶がきっと呼び覚まされるのです!
さらに、濱田さんによると、ルネサンス期のスペインやポルトガルの歌を研究していると、それらが日本のわらべ歌や民謡に似ているような気がするのだそう。料理を始め様々なものにポルトガル語起源の言葉が沢山残っているのだから(例えばカステラ、パン、ボタン・・・)、音楽だってきっと何かしらの影響を受けているはず・・・という仮説に基づき、濱田さんがたどり着いた一つの結論が、この「エソポのハブラス」と題されたコンサートとも言えそうです。


最後に濱田さんからのメッセージを引用しましょう。

―目に見えない「音楽」のこと、もしかして我々が日本古来の音楽だと信じ込んでいるものの中に、実は南蛮渡来のスタイルが混在しているということはないだろうか?そうだと仮定すれば、我が国の西洋音楽の歴史は明治時代よりかなり遡ることができる。
しかも日本の歌だと思い込んでいるというところが、より血肉になっている感じがする。
そうなれば、我々ヨーロッパの音楽に携わる日本人にとって、大きな自信に繋がると感じている。
(アントネッロ音楽監督 濱田芳通)










出 演 者



アントネッロ Anthonello

竹田イネス 役:阿部雅子(ソプラノ)
ゴンサロ・オリヴェイラ 役:中嶋克彦(テノール)
ヴィオラ・ダ・ガンバ:石川かおり
チェンバロ/バロック・ハープ:西山まりえ
パーカッション:濱元智行 追加参加決定!
リコーダー/コルネット/法螺貝:濱田芳通

音楽監督/企画構成:濱田芳通
台本:タナカ・ミオ
制作:栗原佳江



プ ロ グ ラ ム (◆歌付き/◇器楽)




◇ディエゴ・オルティス:パバナス
◆作者不詳(エルヴァシュ歌曲集):
《恋人よ、あなたを見る時》

◆作者不詳(サカラメンタ提要)&ホアン・デ・ウレーデ:
《大いなる秘蹟ゆえ》

◆アロンソ・ムダーラ:
「主が家を建てられるのでなければ」に基づく替え歌
◆作者不詳(古謡):《牛の世話をしてくれたら》
◆作者不詳(エルヴァシュ歌曲集):ラス・バカス
   《緑の野原にため息をつきに来てちょうだい》
◆作者不詳(エルヴァシュ歌曲集):《君の町へ》
◇アントニオ・カレイラ:ファンタシア
]
◇ルイス・デ・ナルバエス:
《牛の世話をしてくれたら》による変奏曲
◆天草の子守唄:《おろろんおろろん》

◆ホアン・ポンセ:《めでたし澄みきったワインの色》
◆作者不詳(王宮の歌曲集):
《僕のかわいいヒョウタンちゃん》
◆エステバン・ダサ:
《あなたから笑顔と元気を奪ったのは誰?》
◆作者不詳(古謡):《ああ、美しい恋人よ》
◆作者不詳(ウプサラの歌曲集):《キスして抱きしめて》



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【登場するイソップ寓話】
『アリとセミ』(アリとキリギリスの原型)
『ウサギとカメ』 『犬と肉』 
『牛とオオカミ』
『出陣の法螺貝』 『カラスと狐』






古楽アンサンブル・アントネッロのニューイヤーコンサート

エソポのハブラス

イソップ寓話と安土桃山時代の南蛮音楽

2018.1.14(日) 15:00開演(14:30開場)
指定席 一般4,000円 学生2,400円
チャリティーシート 4,400円 
ハーフ60 2,400円
ご予約は宗次ホールチケットセンターへ 052-265-1718

エソポのハブラス(表)
エソポのハブラス(裏)

 


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