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サントリーホール室内楽アカデミーから生まれたピアノ三重奏団と超ベテランの共演
10月21日(土)
アルク・トリオ with 磯村和英(ヴィオラ)
「常設のピアノトリオ、というものに是非なってください」という堤剛先生の言葉をいつも心に留めています。
メンバー、小澤佳永さん(ピアノ)へのインタビュー
アルク・トリオ ARC Trio
依田真宣(ヴァイオリン)、山本直輝(チェロ)、小澤佳永(ピアノ)
2011年、サントリーホール室内楽アカデミー第1期生により結成。
その後も同アカデミー第2期、第3期生としてアカデミーに参加。
2013年メルボルン・アジア太平洋室内楽コンクールピアノトリオ部門第2位。
2016年度青山音楽賞(バロックザール賞)受賞。
堤剛、若林顕の各氏、クァルテット・エクセルシオに師事。
M.プレスラー、L.フライシャー、C.デゼール、R.バボラーク、渡辺玲子、竹澤恭子、豊嶋泰嗣、M.ブルネロ、の各氏およびミロ・クァルテット、カルミナ四重奏団、東京クヮルテットのマスタークラスを受講。
共演: 磯村和英(ヴィオラ)
桐朋学園でジャンヌ・イスナール、小林健次、齋藤秀雄各氏に学び、1968年よりジュリアード音楽院においてイヴァン・ガラミアン、ウオルター・トランプラー、ロバート・マン、ラファエル・ヒリヤー各氏に学ぶ。
1969年秋に東京クヮルテットを結成。ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位を受賞。
その後カルテットと共に44年間にわたり、ニューヨークを拠点に世界各地で演奏活動を続けた。
東京クヮルテットがレコーディングしたレパートリーは数多くの受賞を重ね、グラミー賞には7回ノミネートされている。
現在は桐朋学園大学特任教授、マンハッタン音楽院講師。2013年に外務大臣表彰。
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●まず、アルク・トリオ結成の経緯をおしえてください。もともと3人はお知り合いだったのでしょうか?
〇3人とも東京藝術大学の出身で、互いに名前は認識していたものの学年は違います。ですのでこれだけ距離が縮まったのはサントリー・ホールのアカデミーがきっかけです。もっとも依田さんと私についてはそれ以前にすでに知り合ってはいて、このアカデミーの募集の話も依田さんから教えてもらったのです。
●小澤さんがこのサントリーの室内楽アカデミーに参加しようと思った動機は?
〇応募したとき、すでに私は大学の演奏研究員として働き始めていました。学生という立場ではなくなったことで、かえって音楽を学び続けたくなったのです。もちろんピアノだけのことなら1人でも追究できるでしょう。でも室内楽は1人でやっていてもどうしようもありません。依田さんにこの募集のことを教えてもらって、まさに自分が望んでいた室内楽を通して音楽を学べる場所だと思って応募したのです。
●そもそも小澤さんがソロだけでなく、特に室内楽に関心を持った理由は何だったのでしょうか?
〇子供の頃についた先生の影響は大きいですね。父親の仕事の都合で子供の頃アメリカで暮らしていたのですが、そこで出会った音楽の先生の本職が指揮者で、ピアノソロの曲でも常にオーケストラやアンサンブルの話を例えに出してくれました。私がどれだけ練習不足なことがあっても怒らない先生でしたが、逆に褒められることもありませんでした。(not badが最高の褒め言葉でした笑…いつも、ああ、よくはないんだな、と思っていました)
●その先生の指導なら確かに室内楽に興味も湧きますね。
〇先生はサマースクールや協奏曲を演奏する機会への参加も勧めてくださいました。私は今以上に未熟だったので何かを極める時は辛いこともある、ということをまだ知らず「音楽はこんなに素晴らしい」といつも思っていました。帰国後は迷わず音楽の道に進もうと決めて今に至ります。辛いことがない、とは言いませんが、後悔をしたことは一度もありません。
●ソロと室内楽、同じピアノでもやはり違いますか?
〇アメリカの先生に限らずなのですが、私はとても、先生に恵まれてきました。どの先生も「室内楽には積極的に参加してね」と言ってくださいました。たとえそれで時間がなくなり、レッスンにもっていく曲がボロボロでも、それもまた良いことだと。最近よくアメリカ時代の先生に「ピアノは指10本で音を出すことができるので、10人いるのと同じだよ」というアドバイスを受けたことも思い出します。親指の気持ち、小指の気持ち…各声部の気持ち…音楽の無限の可能性を見出せそうな気がしてきます。
●サントリー室内楽アカデミーの話に戻りますが、実際に参加してみて、いかがでしたか?
〇このアカデミーで音楽だけでなく人間としても素晴らしい先生方、そして仲間に出会うことができ、私の人生にとってかけがえのない宝物になりました。今でもアカデミーのメンバーでよく顔を合わせています。
●アカデミーをきっかけにアルク・トリオとしてメルボルン、ミュンヘン、大阪……と、世界的な国際コンクールに挑戦していますね。
〇私にとって一日中話し続けてもエピソードが尽きないのが、トリオ結成から1年も経たないうちに参加した二つの海外コンクール(メルボルン、ミュンヘン)です。年齢制限の心配もあり、とにかく急いで参加しようとダメもとで参加した私たちにとって、コンクールは初めてのこと尽くしでした。二都市とも素晴らしく綺麗な場所で、街中がコンクールを心から楽しみにしているのがわかりました。特にメルボルンはラジオのライブ収録が常に入っており、演奏した後にインタビューもセットでついてきました。更にファイナルラウンドの前に室内楽コンクールにスポットを当てたラジオ番組があったのですが、日本からの参加というのが珍しかったのか、私に参加者代表で出て欲しいと依頼があり、急遽出演することになりました。
●外国でラジオ収録! 貴重な経験でしたね。
〇いつ自分に話が振られるかわからないので、1時間番組の間ずっと緊張していました。舞台でも緊張はしますが、あの時は体が硬直しすぎて収録の日の夜は泥のように眠りました。それとは別にメルボルン在住の日本人向けの番組にもトリオの3名で出させていただきました。ファイナルラウンドにいけたら放送します、という約束だったので、放送された時は皆でとても喜びました。
●コンクールの期間中、滞在中の生活はどのようにされているのですか?
〇3部屋ほどある素敵なアパートを皆で借りて住んでいたのですが、男性2人が料理、皿洗いをやってくれ、私はとっても快適でした。私は英語のインタビュー担当だったので、その分2人とも気を遣ってくれたのだと思います…笑
●ミュンヘンでのコンクールはいかがでしたか?
〇ミュンヘンは私たちが憧れて止まないボザール・トリオのピアニスト、メナヘム・プレスラー先生が審査委員長をされていて(室内楽アカデミーにもゲスト講師で一度いらっしゃった)、とにかくお会いしたかったので予備審査に通った時は3人で大興奮でした。ミュンヘンは大変厳しいコンクールで、1次審査が終わった段階で30組から10組に絞られます。私たちは参加できただけで幸せで1次審査の結果発表を待たずに帰り支度を始めていたのですが、通過したと聞いてパニック状態でした。
●それは嬉しいパニックですね!
〇一次審査を通過すると参加者に大会主催者が指定するホテルの部屋と、その周辺レストランで使えるお食事券がもらえることになっていて結果発表後すぐに事務局に行くべきだったのに、私たちはそのことを知らず、次の日演奏を終えてから事務局にいったら時すでに遅し。3人で同じホテルに泊まれずバラバラに。私はドイツ語が全くできないので食事をどうしようと途方に暮れていると、他の出場者たちが食事券が使えるレストランに連れてってくれました。
●他の出場団体との交流は刺激的でしょう?
〇それこそ他の団体は結成して何年も経つそれぞれの国の代表のような存在で、コンクール常連の団体同士では顔見知りだったようです。話題のスケールが大きすぎて(!)、私はその場に居られるだけで幸せでした。
●さて、今回はヴィオラの磯村先生との共演です。小澤さんに「どなたか共演してみたい方は?」とホール側から質問した時、最初に名前が挙がったのが「磯村先生」でしたね。
〇はい、磯村先生は私たちからしたら雲の上のような方にも関わらず、気さくでとてもフェアに接してくださいます。今回の演奏会で最初に演奏するハイドンは、磯村先生にアカデミーの合宿でレッスンしていただいた曲なのですが、先生のユーモアたっぷりのご指導、時に先生自ら音を出してくださったり、踊ってみせてくださったり本当に楽しく、良い思い出です。それで今回のプログラムの1曲目に決めたのです。
●最後にアルク・トリオの男性メンバー2人について人物像を紹介していただけますか?
〇私が室内楽に長く携われている理由として先生に恵まれたことと同時に共演者に恵まれていることも大きいとつくづく思うのです。依田さん、山本さんともに共通して本当に心の底から優しい人間です。コンクールなど緊張する場面でずっと一緒にいてもその人柄のおかげで私は(もちろん緊張はするのですが)良い気持ちでいられます。依田さんは、現在東京フィルでコンサートマスターをしていることもあり、引っ張っていく力をとても感じますが、それが決して偉そうだったり無理矢理だったりしません。トリオで集まった時、いつも最初に面白い話を始めてくれます。ネタが沢山あります。とても、ユーモアたっぷりなのですが少しシャイなところもあります。そこもまた可愛らしい人間性を感じています。そしてさりげなくいつも気を遣ってくれているのがわかります。実はかれこれ10年以上仲良くしてもらっています。とても感謝しています。
●依田さんについて高評価ですね!チェロの山本さんは?
〇山本さんは3人の中で一番年下なのですが隠れムードメーカーです。一見口数は少なめ、実際穏やかでおとなしめの性格なのですが、とにかく笑いの打率がよく、依田くんが面白い話をしはじめて、山本くんがとどめを刺して私の腹筋が崩壊する、というのが、お約束です。穏やかで面白いのでとにかく私はずっと笑っています。そんなぽかぽかなお日様のような優しい人です。年下ではありますが、とても頼り甲斐もあります。仲良し、という枠を超えた仲の良さが、アルク・トリオの長所だと思います。
●アルク・トリオの今後の活動について、目標などは?
〇アカデミーのオーディションの時に、私たちが大変お世話になったチェロの堤剛先生が「日本にまだ存在していない《常設のピアノトリオ》というものに是非なってください」とおっしゃってくださったことをいつも心に留めています。そのためにまずは続けていく、ということ、そしてその中で自分たち、アルク・トリオの音、常設トリオならではの響というものを確立していきたいと思います。と、同時に少しでも多くの方に私たちアルク・トリオの音を聴いていただき、また成長を見守っていただけましたら幸いです。
(聴き手:宗次ホール 西野)
アルク・トリオ with 磯村和英
ハイドン:ピアノ三重奏曲 ハ長調 Hob.XV:27
ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調 Op.90 「ドゥムキー」
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第3番 ハ短調 Op.60
10月21日(土) 18:00開演 17:30開場
指定席 3,500円 (チャリティーシート 3,850円)
ご予約は宗次ホールチケットセンターへ 052‐265‐1718
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(営業時間 10:00~16:00 夜公演が開催される日はコンサート終了時まで )
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